No−248

無帰還IVC型MCプリアンプをStudyする


その2





以前の内容はこちら




・以前からかなり時間がたった。


・ので、その後の状況。

最初に、No−248 Simple TR MCプリアンプ。


















・2SA606、2SC960を使用した 簡素版無帰還IVC型MCプリアンプ



















・ちょっとだけ改変してある。

・回路はこう。

・初段下の定電流回路のベース電圧を決めるツェナーダイオードをHZ6C2からHZ3C1に変更し、エミッタ抵抗を5.6kΩから2.2kΩに変更。

・終段2SC960のエミッタ抵抗を560Ωから330Ωに変更するとともに、ツェナーダイオードHZ3C1を新たに挿入

・出力の抵抗を560Ω+100Ω+1kΩボリュームから100Ω+100Ω+1kΩボリュームに変更。

・SAOC入口の抵抗を30megΩから10megΩに変更。

・要すれば、電流ゲインをやや増やし、その結果的に電圧ゲインをやや減らしたもの。
・それを観るシミュレーション結果。



・まず、下が電圧ゲイン。



・緑のV(vb)/V(in)が、終段ダーリントンTR入口=イコライザー素子までの電圧ゲインで、赤のV(out)/V(in)が終段ダーリントンTR出口での電圧ゲイン。



・終段ダーリントンTRでボリューム最大で△5dB近く電圧ゲインが減っていることが分かる。



・上が、電流ゲイン。要はこれがNo−248 Simple TR MCプリアンプのgmで、0dBがgm=1Sである。



・なので、1kHzにおいては、ボリュームR34=1kΩの時には約9.5dB=3S、100Ωの時には約3.5dB=1.5S
、10Ωの場合は約−11dB=0.28S、1Ωの場合は約30dB=0.03S、0.1Ωの場合は約50dB=0.003Sである。
・前がどうだったのか分からなければ、電流ゲインをやや増やし、電圧ゲインをやや減らしたことが明らかにならない。



・従前の回路で同じくシミュレーションをする。
・結果はこう。



・下が電圧ゲインだが、改定前は終段ダーリントンTRの電圧ゲインはほぼ0dB〜2dB程度だったものが、上の改定後では△3.5dB以上減少していることも分かる。



・次に電流ゲインだが、この表上の電流ゲインの結果と改定後の結果を見比べると、約4dB程度ゲインが上昇していることが分かる。
・改定後の、1kHzの0.3mV、1mV、2mV、3mV、4mV、5mVサイン波入力における、出力電圧及び出力電流を観る。
・上が電流出力、下が電圧出力の状況。



・入力5mVまで問題なく対応している。



・良いね。
・が、良いことばかりではない。

・1mV、1kHzサイン波入力における歪率を観ると、

・Total Harmonic Distortion=0.051907%。

・従来型では、
0.010226%であったから5倍以上悪くなった。

・が、従来型より電流ゲインが4dB大きくなったのだから、入力を−4dB≒0.63倍=0.63mVにして測定しなければ、比較にならないので、やってみたところ、


・Total Harmonic Distortion=0.031952%。

・残念ながら、3倍以上となった。

・終段2SC960のエミッタ抵抗を減らしたため、電流帰還、要するにNFB量が減ったためだろう。

・が、無帰還であるし、この単純な回路で十分な出力をもたらすMCプリアンプとなっているのだから、不満はない。
・SAOCの入口の抵抗を30megΩから10megΩに変更したのは、本体の変更に伴い、低域のピーク周波数を適正にするためのもの。



・これに伴い、電源オン直後に出力電圧に現れる過渡的電圧が0Vに終息するまでの様子も変わる。



・その状況を、カートリッジVTCを繋いでいる場合と、繋いでいない場合でシミュレートする。
・結果。



・緑がカートリッジVTCを繋いでいる場合、赤が繋いでいない場合。



・従来型に比較すると、過渡電圧もやや小さくなり、0Vに終息するまでの時間も半分程度に短くなっている。
   
次に、No−248 Simple MOS MCプリアンプ。


















・2SJ77、2SK214を使用した 簡素版無帰還IVC型MCプリアンプ



















・これもちょっとだけ改変してある。

・回路はこう。

・終段2SK214のソース抵抗を560Ωから330Ωに変更するとともに、ツェナーダイオードHZ3C1を新たに挿入

・出力の抵抗を560Ω+100Ω+1kΩボリュームから100Ω+100Ω+1kΩボリュームに変更。

・SAOC入口の抵抗を30megΩから10megΩに変更。

要すれば、No−248 Simple TR MCプリアンプと同じ。

・これも、電流ゲインをやや増やし、その結果的に電圧ゲインをやや減らしたもの。
・それを観るシミュレーション結果がこれ。


・まず、下が電圧ゲイン。


・緑のV(m1g)/V(in)が、終段MOS入口=イコライザー素子までの電圧ゲインで、赤のV(out)/V(in)が終段MOS出口での電圧ゲイン。


・終段MOSでボリューム最大で△5dBゲインが減っていることが分かる。


・上が、電流ゲイン。要はこれがNo−248 Simple MOS MCプリアンプのgmで、0dBがgm=1Sである。


・なので、1kHzにおいては、ボリュームR34=1kΩの時には約8.0dB=2.5S、100Ωの時には約3.5dB=1.5S、10Ωの場合は約11.3dB=0.27S、1Ωの場合は約30.5dB=0.03S、0.1Ωの場合は約50.5dB=0.003Sである。


・測定誤差と言うか読み取り誤差があるので、大体Simple TR MCプリアンプと同じだが、全体的にやや小さい。


・これは、2SK214のgmが2SC1400+2SC960によるダーリントンTRによるgmよりやや小さいためだろう。


・従前の回路で同じくシミュレーションをする。
・結果はこう。



・下が電圧ゲインだが、これと比較すると、改定前のMOSの電圧ゲインはほぼ△5dB以上減少していることも分かる。



・次に上の電流ゲインだが、この表上の電流ゲインの結果と改定後の結果を見比べると、約5dB程度ゲインが上昇していることが分かる。
・改定後の、1kHzの0.3mV、1mV、2mV、3mV、4mV、5mVサイン入力における、出力電圧及び出力電流を観る。
・上が電流出力、下が電圧出力の状況。



・入力5mVまで問題なく対応している。
・1mV、1kHzサイン波入力における歪率を観ると、

・Total Harmonic Distortion=0.122325%。

・従来型では、
0.03106%であったから4倍悪くなった。

・が、従来型より電流ゲインが5dB大きくなったのだから、入力を−5dB≒0.56倍=0.56mVにして測定しなければ、比較にならないので、やってみたところ、


・Total Harmonic Distortion=0.067753%。

・TR版と同様、残念ながら、2倍以上となった。

・これも、2SK214のソース抵抗を減らしたため、電流帰還、要するにNFB量が減ったためだ。しょうがない。
・SAOCの入口の抵抗を30megΩから10megΩに変更したことに伴い、電源オン直後に出力電圧に現れる過渡的電圧が0Vに終息するまでの様子を観る。



・カートリッジVTCを繋いでいる場合と、繋いでいない場合でシミュレート。
・結果。



・緑がカートリッジVTCを繋いでいる場合、赤が繋いでいない場合。



・従来型に比較すると、過渡電圧もやや小さくなり、0Vに終息するまでの時間も半分程度に短くなっている。
   
・続いて、No−248 Simple SIT MCプリアンプ。


















・2SK63を使用した 簡素版無帰還IVC型MCプリアンプ


















・これも同様にちょっとだけ改変してある。

・回路はこう。

・終段2SK63のソース抵抗を560Ωから330Ωに変更するとともに、ツェナーダイオードHZ4B2を新たに挿入

・出力の抵抗を560Ω+100Ω+1kΩボリュームから100Ω+100Ω+1kΩボリュームに変更。

・SAOC入口の抵抗を30megΩから10megΩに変更。

・2SK63のドレイン―ゲート間に取り付けていた5pFを撤去。

要すれば、No−248 Simple TR MCプリアンプ、No−248 Simple TR MCプリアンプ同じ。

・これも、電流ゲインをやや増やし、その結果的に電圧ゲインをやや減らしたもの。
・それを観るシミュレーション結果。


・まず、下が電圧ゲイン。


・緑のV(m1g)/V(in)が、終段SIT入口=イコライザー素子までの電圧ゲインで、赤のV(out)/V(in)が終段SIT出口での電圧ゲイン。


・終段SITでボリューム最大で△6dBゲインが減っていることが分かる。


・上が、電流ゲイン。要はこれがNo−248 Simple SIT MCプリアンプのgmで、0dBがgm=1Sである。


・なので、1kHzにおいては、ボリュームR34=1kΩの時には約8.7dB=2.7S、100Ωの時には約2.8dB=1.38S
、10Ωの場合は約12dB=0.25S、1Ωの場合は約31.2dB=0.026S、0.1Ωの場合は約51dB=0.0028Sである。


・大体Simple TR MCプリアンプやとSimple MOS MCプリアンプより、全体的にやや小さい。


・これは、2SK63(=2SK79)のgmが2SK214のgmよりやや小さいためだろう。
・従前の回路で同じくシミュレーションをする。
・結果はこう。



・下が電圧ゲインだが、これと比較すると、改定後のSITの電圧ゲインはほぼ△5dB以上減少していることが分かる。



・また、終段SITによる電圧ゲインは、従前は0dB程度であったものが、改定後は△4dB以下になっている、従前型では2SK63のドレイン―ゲート間に発振対策として5pFが必要だったものが、改定後は必要なくなったのは、このためであろう。



・次に上の電流ゲインだが、この表上の電流ゲインの結果と改定後の結果を見比べると、約5dB程度ゲインが上昇していることが分かる。
・改定後の、1kHzの0.3mV、1mV、2mV、3mV、4mV、5mVサイン入力における、出力電圧及び出力電流を観る。
・上が電流出力、下が電圧出力の状況。



・入力5mVまで問題なく対応している。
・1mV、1kHzサイン波入力における歪率を観ると、

・Total Harmonic Distortion=0.149502%。

・従来型では、
0.036179%であったから4倍以上悪くなった。

・が、従来型より電流ゲインが5dB大きくなったのだから、入力を−5dB≒0.56倍=0.56mVにして測定しなければ、比較にならないので、やってみたところ、


・Total Harmonic Distortion=0.08309%。

・TR版、MOS版と同様、残念ながら、2倍以上となった。

・これも、2SK68のソース抵抗を減らしたため、電流帰還、要するにNFB量が減ったことによるので、しょうがない。
・SAOCの入口の抵抗を30megΩから10megΩに変更したことに伴い、電源オン直後に出力に現れる過渡的電圧が0Vに終息するまでの様子を観る。



・カートリッジVTCを繋いでいる場合と、繋いでいない場合でシミュレート。
・結果。



・緑がカートリッジVTCを繋いでいる場合、赤が繋いでいない場合。



・従来型に比較すると、過渡電圧は半分程度になり、0Vに終息するまでの時間も半分程度に短くなっている。
   
・続いて、No−248 Simple 404A MCプリアンプ。


















・WE404Aを使用した 簡素版無帰還IVC型MCプリアンプ


















・これも同様にちょっとだけ改変してある。

・回路はこう。

・終段404Aのカソード抵抗を560Ωから330Ωに変更。

・出力の抵抗を560Ω+100Ω+1kΩボリュームから100Ω+100Ω+1kΩボリュームに変更。

・SAOC入口の抵抗を30megΩから10megΩに変更。

・404Aのプレート―グリッド間に取り付けていた10pF+10pFを、左チャンネルは撤去、右チャンネルは5pF+5pFに変更。

要すれば、これまでのSimple MCプリアンプ達に同じ。

・これも、電流ゲインをやや増やし、その結果的に電圧ゲインをやや減らしたもの。



・ただし、404Aのモデルがなく、C3Gのモデルで代用しているので、以下どこまで正しいかは不明。
・それを観るシミュレーション結果。


・まず、下が電圧ゲイン。


・緑のV(Vg)/V(in)が、終段C3G入口=イコライザー素子までの電圧ゲインで、赤のV(out)/V(in)が終段C3G出口での電圧ゲイン。


・終段C3Gでボリューム最大で△8dBゲインが減っていることが分かる。


・上が、電流ゲイン。要はこれがNo−248 Simple 404A MCプリアンプのgmで、0dBがgm=1Sである。


・なので、1kHzにおいては、ボリュームR34=1kΩの時には約7.65dB=2.41S、100Ωの時には約2.5dB=1.33S
、10Ωの場合は約12.3dB=0.24S、1Ωの場合は約31.5dB=0.026S、0.1Ωの場合は約51.5dB=0.0026Sである。


・Simple TR MCプリアンプやSimple MOS MCプリアンプ、そして、Simple SIT MCプリアンプのgmよりやや小さい。
・従前の回路で同じくシミュレーションをする。
・結果はこう。



・下が電圧ゲインだが、従前から終段C3Gの電圧ゲインは△3dBとマイナスだったことが分かるが、改定後のSITの電圧ゲインは更に△5dB程度減少して、トータル△8dBとなっていることが分かる。



・こういう事なので、Simple 2SK63 MCプリアンプと同様に404Aのプレート―グリッド間の10pF+10pFはもう不要だろうと、これを外したのだが、左チャンネルはそれで良かったが、右チャンネルはそうは行かず、5pF+5pFが必要で、これがないと発振する。何とも難しいものだ。



・次に電流ゲインだが、この表上の電流ゲインの結果と改定後の結果を見比べると、約4dB程度ゲインが上昇していることが分かる。
・改定後の、1kHzの0.3mV、1mV、2mV、3mV、4mV、5mVサイン入力における、出力電圧及び出力電流を観る。
・上が電流出力、下が電圧出力の状況。下の電圧出力のC3Gのグリッド電圧V(vg)は−110V付近なので、110Vを加算して見やすく表示したもの。



・入力5mVまで問題なく対応している。
・1mV、1kHzサイン波入力における歪率を観ると、

・Total Harmonic Distortion=0.223729%。

・従来型では、
0.060393%であるから4倍近く悪くなった。

・が、従来型より電流ゲインが4dB大きくなったのだから、入力を−4dB≒0.63倍=0.63mVにして測定しなければ、比較にならないので、やってみたところ、


・Total Harmonic Distortion=0.1407651%。

・残念ながら、2倍以上となった。

・これも、C3Gのカソード抵抗を減らしたため、電流帰還、要するにNFB量が減ったことによるので、しょうがない。
・SAOCの入口の抵抗を30megΩから10megΩに変更したことに伴い、電源オン直後に出力に現れる過渡的電圧が0Vに終息するまでの様子を観る。



・カートリッジVTCを繋いでいる場合と、繋いでいない場合でシミュレート。
・結果。



・緑がカートリッジVTCを繋いでいる場合、赤が繋いでいない場合。



・従来型に比較すると、過渡電圧は半分程度になり、0Vに終息するまでの時間もやや短くなっている。



・が、実機ではこうはならない。このシミュレーションでは、電源オン後真空管のヒーターが徐々に暖まって恒常状態になる過程がすっぽり抜けている。
   

・以上4台の簡素版無帰還IVC型MCプリアンプ

・DL−103用のMCプリアンプがこんなに簡素に成り立っている。奇跡のよう。

・音も素晴らしい。

・以上4台の簡素版無帰還IVC型MCプリアンプに音の違いはあるか?

・と言うと中々難しい。

・駄耳のせいなのが一番大きいが、4台とも、音を作っている中核がカートリッジVICの2SK97であるということがある。

・2SK97のgmとイコライザー素子のインピーダンスで、1kHzで60dB=1000倍のゲインが稼がれているのだ。

・TRやMOS、SIT、そして真空管を用いた終段は、バッファに過ぎない。

・そのバッファの違いが耳で分かるか?と言うことだが、まぁ、ほぼ分からない。(爆)

・が、敢えて言えば、SIT 2SK63を用いたNo−248 Simple SIT MCプリアンプの音がなかなか好ましい。

・SITは登場した途端に消えてしまったが、音は良いものだったのだ。

・私は、V-FET(SIT)2SJ18−2SK60パワーアンプ兼パワーIVCとSIT(V−FET)2SJ20A−2SK70Aパワーアンプ兼パワーIVCと、V-FET(SIT)起用のパワーアンプ兼パワーIVCを有しているが、理由はそういうこと。

・さらに、敢えて言えば、MOS 2SK214を用いたNo−248 Simple MOS MCプリアンプの音も良い。

・効率の悪いSITを消滅に追いやった素子だが、音も端正と秀才的な素子だ。

・次にTR。2SC960(2SC959も同じもの)を用いたNo−248 Simple TR MCプリアンプ。

・近ごろは先生もTRに回帰されている。先生がはるか昔に選び抜かれたTRだ。音が良いのは当たり前。高解像度と仰られるがその通りかな。


・そして、真空管。WE404Aを用いたNo−248 Simple 404A MCプリアンプ

・残念ながら、如何にも真空管と言った感じの音はしない。奥行きが深い空間感が出るが、基本的に半導体を用いた他のSimple MCプリアンプ達と同様の音がする。要するに良い。

・総じて、どれも最近の光カートリッジとそれ用に製作した光カートリッジ用プリアンプが奏でる音に肉薄又は匹敵する音がする。ので、今後も生き残るだろう。

  




2024年6月21日